記事をご覧になっていただいた方、ありがとうございます。
前回は第一回と言うことで、理論へのありがちな認識と実際どうなのかということについて書かせていただきました。いかがだったでしょうか。
元々理論の話も含め、まずはそういった話をいくつかまとめたものをと考えていたのですが、一つ書くだけでかなり文量が膨れ上がってしまい、記事を分けることになりました。書いてるうちにどんどん掘り下げる範囲が広がっていってしまうので困ったものです。
さて、今後しばらくはいくつかのありがちな認識とその実際のところについて、やはり文量が膨らんでしまうので基本一つずつ触れていくつもりです。よろしくお願いします。
ー マイナースケールと呼ばれているもの ー
今回はこちら、マイナースケールと呼ばれているものについてです。
おそらく初心者の人でもかなり多くの人が知っている、耳にしているものだと思います。
そうです。スケールの話で「スケールはメジャーとマイナーの二つを覚えとけばおk」と最初に教わったりする、ラシドレミファソラのあいつです。「メジャーが明るくてマイナーが暗いやつ」の暗いほうのやつです。これについてのお話です。
それではいきなりですが、有名曲でも自分やフォロワーの曲でもいいので、この曲はマイナースケールの曲だというものを、出来たらでいいので思い浮かべてみてください。何かしら思い浮かぶものがある方と、そんないきなり言われても出てこないという方と、それぞれいるかと思います。さすがに後者の方が多いですかね。
では次に、さきほど思い浮かんだという方、その曲はなぜマイナースケールなのかわかるでしょうか? 明確にこうだからこの曲はマイナースケールだと言えるものはありますか? 思い浮かばなかったという方も、マイナースケールの曲であるとはどういうことなのかわかるでしょうか? 是非考えてみてください。
「暗い曲調だから…?」
「作った人がマイナースケールと言ってたから…?」
「コード進行を基本Aマイナーから動かしているから…?」
「マイナースケールを意識してメロディを作ったから…?」
おそらく、自信を持ってはっきりと言い切れる人はそういないんじゃないでしょうか?
ぶっちゃけ、暗い曲調だからマイナースケールなんてのは雑もいいところです。その曲が暗い曲調であっても、メロディがマイナースケールを意識して作られていても、だいたいの場合はメジャースケールの中で暗い曲調をしているという場合がほとんどです。
その暗い曲、実は明るくないメジャースケールの曲だったんです。
わかっていない人は、暗いから、ラシドレミファソラを意識してメロディを作ったから、そんな漠然とした理由だけでマイナースケールの判断をしています。なぜなら、マイナースケールについて、ラシドレミファソラ・暗いという情報しか知らないからです。大多数のわかっていない人たちがわかっていないまま、そのなんとなくの理解が普及し定着してしまったために、そんなぼんやりとした話が知っていて当然な知識として広く出回ってしまっているからです。みんな自分がよくわかってないまま「マイナースケールとはこういうものだと思っておけばいいよ」と言っているわけです。ネットなどにもそういった記事が普通に転がっているわけです。なかなかに無責任な話だとは思いませんか?
実際、マイナースケールが何故マイナースケールなのかについてよくわからないままでも、かっこいい曲、エモい曲は作れてしまいます。
……そうなんです。
よくわからなくてもなんとかなっちゃうんです。
また、だからこそここまでそんな曖昧な話が曖昧なまま普及したわけでもあります。しかし逆に考えれば、そんな雑な理解のままで全然オーケーということでもあります。本当に、本格的なクラッシックやジャズをやるのでもなく、趣味でDTMをやっていくだけならば、理論の理解なんてそんなもんでいいんです。
こうして今書いている自分であっても、マイナースケールは何故マイナースケールなのかについて知る必要がたまたま発生したために、現在は理解ができているというだけに過ぎません。というか、ダークな曲を作るにあたって無自覚に本来の意味でのマイナースケールを意識したコード進行で曲を作っていました。マイナースケールを本来の意味で理解したのはその後の話です。
このように、コード・スケールまわりに関して、理論がわからないからと言って気にせずに、自分の中で受け入れ態勢が整い始める、本当に必要になる時を気長に待っていれば大丈夫です。
ー よくわからないことのよくないこと ー
ここまでの話から、「よくわからないままでいいんだ! じゃあいいや!」となった人、じゃあいいや!ではありません。ダメです。そのままでは、あなたも「スケールは明るい=メジャー、暗い=マイナーでおk」とわからない人に平然と嘘をばら撒く人間になってしまいます。
たしかに、何が正しいマイナースケールかはよくわからないままでも、曲を作っていくにあたってこれといった支障はありません。しかし、他人に教えるとなれば話が別です。自分では親切に教えてあげたつもりに思えて、実は初心者が理論に躓きかねない種をばらまいてしまっています。
通常、コード進行論ではスケールの中心となる音をⅠとして、一音ずつローマ数字を割り当てて扱います。簡単です。メジャースケールのドレミファソラシにそれぞれ1から7のローマ数字が順に割り当てられているというだけの話です。これによって、スケールの構成音によらず共通してコードを取り扱えるようにしているというものです。これをディグリーネーム(度数)と言います。(スケールの)何度とか言います。456進行とかの456ですね。
さて、例えばで645進行という王道な暗めの進行を考えます。Cメジャースケール(ドレミ)ではラファソにあたります。ファソラがそれぞれスケールの4番目、5番目、6番目にあたるからです。そのまんまですね。
では、メジャースケールの645進行があったとき、これがマイナースケールの中では一体どうなるのでしょうか? スケールがそれぞれあるならば、645という進行を知った時、マイナースケールの時は?と気になるのは自然です。メジャーに合わせてスケールはAマイナースケールとします。つまりラシドレミファソですね。これに順番に数字が対応するので、ラが1、シが2といった対応をしていくわけですが、マイナースケールでもスケールの645であるファレミと見ればいいのか、それともずれた分を考えて1(8)67と扱えばいいのか、どうしたらいいかわかるでしょうか? 初心者はここで判断がつかず混乱しがちです。
答えは「単に~進行などと表す場合、基本的にメジャースケールで度数を考える」です。あまりないのですが、仮に他のスケールで度数・進行の話をするのあれば、何のスケールなのかを明記する場合が多いはずです。何も言わなければメジャースケールとして受け取られるからです。
そもそもわかっていない人がよくわからないままに「暗い曲を作りたい」と思った時、そのイメージにあるのは大抵メジャースケール内で暗めな曲調をしているだけの曲なわけですから、コード進行をマイナースケールで考えること自体がずれているんです。しかし、「マイナースケール=暗い」と鵜呑みにしてしまった人は、その知識を信じて曲を作ろうとしたときに、とりあえずラからコードを動かせばいいということはわかっても、メジャースケールにおけるコード進行の話ばかり出てくる中で、マイナースケールではコード進行をどう扱えばいいのかわからなくなり混乱しやすいです。またそのために、初心者に「理論わからん…(´;ω;`)」という苦手意識を与えてしまいがちなように自分は思っています。
ネットの記事などには度数の対応がこうでと初心者向けに書いてあるものはわりとありますが、言わずと知れた常識すぎて触れるまでに至らないのか、理論知識の範疇ではないために触れないのか、メジャー・マイナースケールの話と合わせてこの部分のフォローをしてくれるものは見かけたことがありません。マイナースケールの正体についてわからない人ばかりなのも、おそらくはこのためでしょう。そのまま慣れていきなんとなくメジャースケールで考えておけばいいんだと察することはできても、結局マイナースケールについてはわからずじまいに終わるからです。しかしそういった人たちが結局はメジャースケールなんだということを初心者に教える機会というのは、なぜか見られません。自分が教えられたように、「マイナーはラシドレミファソラで暗い」と伝えるばかりです。いやあ不思議ですね。
というわけで、是非ともこの記事を読んだ方は、以後初心者にスケールについて教えることがあったときに、その人のためにも「マイナースケールってのもあるんだけど、暗めの曲が作りたいならメジャースケールでラ(6度)を中心にやるって考えとくといいよ」と教えてあげてください。もし「暗いならマイナーじゃないの?」と聞かれたら、「ちゃんとしたマイナースケールでやろうとするのは難しいし、暗いは暗いんだけどじっとりした独特な曲調になるよ」と答えてあげましょう。
ー マイナースケールの正体 ー
さて、直前に少しだけ言及したきりでここまでろくに触れてこなかった、本来のマイナースケールとはなんなのかと言う話についてですが、やはり想像以上に長くなってしまったこともあり、手短に済まさせていただきます。
簡単に言ってしまえば、「メジャースケールで軸となるドとソが持っている役割がラとミに移る」「独特な雰囲気が出る」のがちゃんとしたマイナースケールです。さきほど例に出した645進行は、ラから始まってこそいるものの、締めくくりにソを持ってきているところからしてやはりメジャースケールの中で暗めな曲調をしているだけのものだというわけです。
詳しくは以下のリンク先にわかりやすく書いてあるので、興味のある方は是非読んでみてください。また補足として、締めくくり感を強調するために、ディグリーで5にあたるミソシ(Eマイナー)をメジャーコードに変えて使う場合などもあります。
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