最初に何について書こうか結構悩んだのですが、やはりこれは外せないだろうということで、理論の話についてひとまず書いていきたいと思います。
ー 理論と呼ばれているもの ー
結論から言います。実はあまり気にしなくていいものです。
最近では「曲を作るのに理論を勉強する必要はないが、勉強して損はない」といった言及をよく見かけます。おおよそその通りです。しかし、この後半部分「勉強して損はない」はできない人にとってみれば、要するに「理論がわからない人は損をしている」と言っているのと同じことです。わからない人にはこれが地味にコンプレックスにつながってきてしまいます。現に理論コンプレックスを抱えている人は見る限り結構います。
なので、理論に対する気持ちはフラットに、「気にしない」。これが一番なように自分は思います。実際、本当に必要になった時をきっかけとして時間をかけてでないと大概は定着しません。まったくわからないとなっている段階で、知識学習をしようとしてもかなり効率が悪いです。理論と呼ばれているものは、基本的にパターン学習ができる段階になるまで割り切っておきましょう。大事なのは知識を増やすことではなく、必要なものを一つ一つ、その具体的な使い方をピンポイントに理解していくことです。
さらに言えば、ここまでしつこく理論"と呼ばれているもの"と強調してきましたが、理論と呼ばれているものが指しているのは大抵、コードやコード進行、教会旋法あたりの、曲の中でノートの音程の動きをどう扱うかみたいな話でしかありません。しかし、音楽理論という言葉が本来指し示しているのはそれだけが全てではありません。
さて、クラッシックの理論書である、大正義『楽典』の内容をここで一度挙げたいと思います。
Wikipediaによれば、
楽典の内容は大きく分けて、以下の二つから構成される。
・記譜法(楽譜の読み書きするためのルール)
・記譜法を説明・理解するために必要な、下記の基礎概念と用語の説明。音程、音階、演奏記号(楽語も含む)、旋法、和音、
律動、楽式、和声、対位法、楽器法、音名、拍子
だそうです。
おわかりでしょうか。その辺のDTM界隈でよく言われている理論という言葉が指しているのは、実はこの一部でしかないのです。
また、日本人でドレミファソラシドをわからないという人はなかなかいないとは思いますが、ドレミファソラシドは階名というものにあたり、これも立派な理論のうちの一つです。ドがどの鍵盤なのかわからないという人であっても問題ないです。基礎の基礎ではありますが、大事な知識であることには変わりません。
ー コード進行論の話 ー
理論と言うのはコード・スケールまわりのことだけではない、ということはさきほど書きました。では、具体的にDTMに縁のある部分はどこまでなのでしょうか。
ということで、楽典の内容のうちクラッシックに縁遠い場合でもDTMにある程度関わってくるところを下に挙げたいと思います。
音程、音階、旋法、和音、律動、音名
基本的にはこの辺りです。ちなみに律動というのはリズムのことです。
ここで、あれ?と思った方はいるかと思います。
さきほど理論と呼ばれているものということで挙げたコード、コード進行、教会旋法のうち、コード進行にあたるものはありません。和声がこれに対応すると言えばするのですが、コード進行と和声ははっきり言って別物です。和声とは楽典に載っているようにクラッシックの考え方であり、理論でいうコード進行とは、ジャズにおける考え方となっています。
ひとえに理論と言ったときに、どこまでがクラッシックでどこまでがジャズなのかということを分かってない人は多いと思います。理論と言った時にコード進行はジャズにおける理論だということを、せっかくなので頭の片隅にでも留めておいてください。
そして、ジャズはジャズで全然分からなさそうじゃん結局無理じゃんと思った人、大丈夫です。自分も全然わかっていません。理論がしっかりわかっていそうな人が作るすごい曲、かっこいい曲、エモい曲を作れるようになるにはジャズのコード進行論について深い理解がないとダメ、ということはまったくありません。ジャズのコード進行論よりもさらに簡単に、これだけでよかったりするよ、ということを今後触れていければと考えています。
それと話は変わりますが、コードがうまくつけられない、いいメロディができないと悩んでいる人が、出来ない理由は理論がわかっていないからだと結論付けているところをたまに目にすることがあります。しかし、おそらくジャズの理論を勉強・理解したところでそれらの問題はおそらく直接解決しないと思われます。仮に解決した場合、それは理論理解の過程で得られる副産物的な要因によるものであり、基本的にコード進行論とはコードやメロディのつけ方がわかるようになるためのものではありません。
コード進行論とは、コードの並べ方を整理しているだけのものだと思っておくぐらいでいいと思います。メロディのつけ方に至っては、コード進行とそもそも別の話ですし、改めて考えてみればコード進行への理解をするだけでできるようになるはずがないわけです。なのですが、何がわかっていないのかもわからず、理論コンプレックスがために理論がわかっていないからだと思い込んでしまうのです。そうしてどんどんドツボにハマり理論への苦手意識ばかりが加速していってしまうわけです。
なのでやはり、理論は”気にしない”でいきましょう。コードやメロディの付け方という話は、コード進行論とはまた別の話になると思っておいてください。そしてそれこそが、無数に正解のある、現代のポピュラーミュージックにおける曲作りの中心に位置するものになっています。「理論がわからなくてうまく曲が作れない」と思っている人が実際にわかっていないのは、実はこの部分なのです。この話についても、今後このブログでちびちびと書いていけたらなあと思っていますのでよろしくお願いします。
今回は以上です。思ってたより長文になってしまいました。
ここまでお読みいただけた方はありがとうございます。
次回は今回の内容の続きか、今回の理論のように、持たれがちなイメージと実際のところの差についての話をいくつかピックアップできたらと考えています。
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